No.1193777

蓮が咲き行く道へ十四話

BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘で、成長物語です。

2026-09-26 16:20:14 投稿 / 全1ページ    総閲覧数:41   閲覧ユーザー数:41

十四話「涙にならない痛み」

 

 心霊番組がやってくる季節になった。

 私はこの世界に生まれてから、幽霊は虚(ホロウ)化し、死神が武力で対処することを知っている。だから昔ほどオカルトに興味はない。心霊番組も見ない。

 一護もあまり好きではないらしく、浦原商店に来ては時々愚痴を零していた。

 

 この頃、朽木ルキアと面識を得て、世間話程度なら交わすようになった。

 「浦原喜助の娘」だと言うと、彼女はとても驚いた顔をした。

 

 ただ、一護には負担になると分かっていたけれど、かか様の容体は伝えた。

 一護のせいで消失化が進んでいる――なんて、もちろん口にはしない。

 母を失った経験のある彼は、私とてて様のことを気にかけてくれた。

 大丈夫だとは言わなかった。ただ、かか様の本体は生きている。消えるだけだ。

 

 二週間に一度、目を覚ますサイクルになっていた頃だ。

 てて様は寝ているかか様の手を握り、その手を額に押し当てて感情を堪えていた。

 その横顔を見て、私は――薄情な娘なのだと思った。

 

 二度死んだ。前世を二つ持つ。

 そのせいか、私は死が怖くない。ただ、死んだあとまた何処かに飛ばされるのが嫌なだけ。

 かか様だって、死ぬわけじゃない。

 

 でも、そんなことを誰かに言おうとは思わない。

 前世の記憶が残る私は、死への感覚が希薄で、研究者だった頃の性質がまだ色濃い。

 感情の揺れが鈍いのかもしれない。

 だけど、研究者気質だったてて様がこれほど泣きそうにしているのに――私は、一体何なのだろう。

 

 ※

 

「沖サン……ボクは後ろ向きスかね……」

 

 妻である常沖の消失化が本格的に始まった。

 喜助は滲む涙を、必死に堪える。

 

 ――娘が泣いていないのに、ボクばかりが泣いてはいられない。

 

 愛しい娘・成が泣けていないことは分かっていた。

 あの子は、死を色濃く味わってきた。

 死生観が薄くなるほどに。

 

 二度の前世を経て、今は浦原喜助と常沖の娘として生きている。

 前世の記憶は今も成の核になっている。

 だから母の死に抵抗がない。辛くても――また会えるからだ。

 

 本当なら抱きしめて言ってやりたい。

『それでも、死ぬ本人は辛いんスよ』と。

 

 でも、それは言えない。

 成には、自分で乗り越えてもらわなければならないからだ。

 それが、この子の課題なのだと思う。

 

 前々世で親に焼かれ殺された復讐は、常沖が世界を越えて晴らした。

 だが前世の研究者としての冷徹さは、まだ成の中に残っている。

 成自身が越えなければならない壁。

 過去ではなく――今を生きるために。

 

 ただただ、喜助は願う。

 大事な娘が、未来を見て生きてくれますように、と。


 
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