十四話「涙にならない痛み」
心霊番組がやってくる季節になった。
私はこの世界に生まれてから、幽霊は虚(ホロウ)化し、死神が武力で対処することを知っている。だから昔ほどオカルトに興味はない。心霊番組も見ない。
一護もあまり好きではないらしく、浦原商店に来ては時々愚痴を零していた。
この頃、朽木ルキアと面識を得て、世間話程度なら交わすようになった。
「浦原喜助の娘」だと言うと、彼女はとても驚いた顔をした。
ただ、一護には負担になると分かっていたけれど、かか様の容体は伝えた。
一護のせいで消失化が進んでいる――なんて、もちろん口にはしない。
母を失った経験のある彼は、私とてて様のことを気にかけてくれた。
大丈夫だとは言わなかった。ただ、かか様の本体は生きている。消えるだけだ。
二週間に一度、目を覚ますサイクルになっていた頃だ。
てて様は寝ているかか様の手を握り、その手を額に押し当てて感情を堪えていた。
その横顔を見て、私は――薄情な娘なのだと思った。
二度死んだ。前世を二つ持つ。
そのせいか、私は死が怖くない。ただ、死んだあとまた何処かに飛ばされるのが嫌なだけ。
かか様だって、死ぬわけじゃない。
でも、そんなことを誰かに言おうとは思わない。
前世の記憶が残る私は、死への感覚が希薄で、研究者だった頃の性質がまだ色濃い。
感情の揺れが鈍いのかもしれない。
だけど、研究者気質だったてて様がこれほど泣きそうにしているのに――私は、一体何なのだろう。
※
「沖サン……ボクは後ろ向きスかね……」
妻である常沖の消失化が本格的に始まった。
喜助は滲む涙を、必死に堪える。
――娘が泣いていないのに、ボクばかりが泣いてはいられない。
愛しい娘・成が泣けていないことは分かっていた。
あの子は、死を色濃く味わってきた。
死生観が薄くなるほどに。
二度の前世を経て、今は浦原喜助と常沖の娘として生きている。
前世の記憶は今も成の核になっている。
だから母の死に抵抗がない。辛くても――また会えるからだ。
本当なら抱きしめて言ってやりたい。
『それでも、死ぬ本人は辛いんスよ』と。
でも、それは言えない。
成には、自分で乗り越えてもらわなければならないからだ。
それが、この子の課題なのだと思う。
前々世で親に焼かれ殺された復讐は、常沖が世界を越えて晴らした。
だが前世の研究者としての冷徹さは、まだ成の中に残っている。
成自身が越えなければならない壁。
過去ではなく――今を生きるために。
ただただ、喜助は願う。
大事な娘が、未来を見て生きてくれますように、と。
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BLEACHの二次創作です。
浦原喜助の娘で、成長物語です。